お問い合わせ

プロが教える!トイレのお掃除方法

第6回 ①除菌・除ウイルスはできるの?

除菌・除ウイルスについて


トイレは、細菌やウイルスが持ち込まれ、停滞・拡散する場所でもありますが、これらについてどのように対処したらよいのでしょうか。ここでは、菌やウイルスの性質を確認し、除菌や除ウイルスの効果的な方法について考えます。


◆菌とウイルスは違うもの

菌とウイルスの大きな違いのひとつに、単独で増殖できるかどうかがあります。菌は単独で増殖できますが、ウイルスは生物に寄生することでしか増殖できません。

菌もウイルスも非常に小さく肉眼で確認することはできません。ウイルスは菌よりもさらに小さく、その大きさは数十ナノメートルから数百ナノメートルです。(1ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1)。

菌には次のようなものがあります。

・黄色ブドウ球菌

・カンジダ

・大腸菌

・アスペルギウス

・結核菌

・クロストリジウム

 ウイルスには以下のものがあります。

エンベロープあり エンベロープなし
HIV ロタウイルス
インフルエンザウイルス ノロウイルス 
B型肝炎ウイルス ポリオ
C型肝炎ウイルス      A型肝炎ウイルス     


◆生存期間はどのくらいか

菌やウイルスは環境表面でどのくらい生存できるのでしょうか。

長いものでは年単位で生存するものもあります。

微生物 生存期間
MRSA 7日〜7ヶ月(乾燥表面)
アシネトバクター属 3日〜5ヶ月
大腸菌 1,5時間〜16ヶ月(乾燥表面)
クロストリジウム・ディフィシル 5ヶ月(芽胞・乾燥表面)
ノロウイルス 8時間〜7日(無生物表面上)
ロタウイルス 6日〜60日(無生物表面上)
緑膿菌 6時間〜16ヶ月(乾燥表面;5週間)
セラチア・セラチア・マルチセッセンス 3日〜2ヶ月(乾燥表面;5週間)
肺炎桿菌を含むクレブシエラ属菌 2時間〜30ヶ月以上

 

 ◆感染予防のための清掃方法

トイレ内での感染予防を考慮し、人の手や身体が触れる部位をより入念に清掃するよう心がけなければなりません。

特にトイレの個室内には接触部位が多くありますので注意が必要です。

 

 ◆薬剤について接触部位を拭く際に使用するものとして、除菌・除ウイルス効果が見込めるものには以下のようなものがあります。

・アルコール

・次亜塩素酸ナトリウム

・過酸化水素

・第四級アンモニウム塩

・その他、次亜塩素酸水など

除菌・除ウイルスの効果を高めるためには汚れそのものを除去するというのがひとつポイントとなりますが、そのような観点も含め考えると、加速化過酸化水素を主成分とした除菌洗浄剤に期待が寄せられます。

 

 ◆除菌洗浄剤の効果的な使い方

除菌・除ウイルスの効果をより高めるためには、除菌剤、洗浄剤がより長く環境表面にとどまることが必要となります。例えば加速化過酸化水素を主成分としたある除菌洗浄剤の場合、対象との接触時間を3分~5分としたとき、以下の試験結果となります。

接触時間 希釈倍率 減少値

ウイルス

3〜5分 16〜128倍 99.99%
細菌 3〜5分 16〜128倍 99.999%

※サンプルとして『オキシヴィルファイブ』(シーバイエス株式会社)を使用

 

◆除菌洗浄剤の効果的な使い方

直接対象に吹きつけて使用する、または、塗布して使用するということであれば、表面に悪影響を及ぼすかどうかを判断するために対象部位でのテストを行っておく必要があります。


 ◆洗浄剤の保管と管理

洗浄剤はものによっては成分の分解スピードが速いものがありますので、使用・保管の際はその点を考慮しなければなりません。

②トイレのニオイについては?

トイレのニオイについて


 実は私たちが苦手とするトイレのニオイは尿そのものにはなく、空気中の菌がもつ酵素成分(ウレアーゼ)が尿の成分である尿素を分解しアンモニア臭を発生させています。

尿が飛散する個所はニオイの原因にもなっている、ということを踏まえ清掃に取り組みましょう。


◆目皿の汚れもニオイの原因に

小便器の目皿は常に清掃しておかないと汚れがたまり強いニオイを発するようになります。

尿石化すると簡単には落とせなくなる


清掃を怠ると汚れの一部が固形化していき尿石に変化します。この状態になってしまうと通常の清掃では簡単に落とせません。

これらを落とすためには専用の尿石除去剤などを使用します。


◆清掃以外の脱臭方法

壁面や床面に尿がしみ込んでしまっている場合は清掃のみでニオイを軽減させるのが難しくなります。

 

清掃以外の消臭対策としては、以下のような方法があります。

消臭対策 働き 方法

換気

室内の空気を入れ替え空気を希釈する 換気扇の運転
吸着 ニオイを吸い寄せる 活性炭の設置
芳香 別の匂いを発生させる 芳香剤の設置
分解 酸化作用でニオイを分解する

ストリーマ放電

オゾン発生

 

 

③どのような道具で掃除をするの?

◆資器材の一例

トイレの清掃道具には様々な種類のものがあります。

ここではその一例を紹介します。

クロス(雑巾)


研磨砥清掃する対象部位によって色分けして使用する。マイクロファイバー素材のものが汚れをかき取る能力に優れている。

陶器洗浄具

(洗面ボウル用)


研磨砥粒があるものは陶器表面をキズつけてしまう恐れがある。キズが入りにくい素材のものが望ましい。

排水口洗浄具

(洗面ボウル用)


柄の部分は金属製のものよりも樹脂製のもののほうが安全性が高い。

陶器洗浄具

(便器用)


形付着した汚れを力を入れてこすり落とすこともあるため、キズがはいりにくい素材のものが望ましい。

目皿洗浄具

(便器用)


目皿は様々な形状のものがあるため、ブラシもそれに見合ったものを使用する。

水アカ除去具


左はメッシュ表面に超微細ガラス粉末がついた研磨シート。厚みのある水アカは右の研磨バーでこそぎ落す。

便座拭きペーパー


天井衛生を考慮すると除菌剤を配合しているものが望ましい。

除塵道具


天井、壁面、窓まわり、便器のタンクまわり、ドアまわりのホコリ払いに使用する。

除塵道具

(床用)


室内の広さや床材によって使い分ける。

モップ


クロスと同様に色分けして使用し、他の個所と併用しないようにする。

「清掃中」掲示板


 床に置くタイプのもの以外にもドアノブにかけるタイプの表示板もある

 

◆清掃バックと道具類の収納

収納の際は使用部位ごとに道具を分けるようにします。特に便器の清掃に使用する道具と洗面ボウルまわりの清掃に使用する道具は別々の容器やケースに入れるようにします。

使用した道具にはトイレの細菌などが付着し残留していると考えましょう。

 


◆腰袋やエプロンの活用

清掃時に頻繁に使用するものはエプロンや腰袋に入れておくようにします。

 

◆道具の消毒
使い終えた道具は毎回洗浄し衛生状態を保つようにします。道具が汚れたままだったり雑菌まみれだったりすると、清掃の度に汚染を広げることになります。
クロス(雑巾)が臭うのは雑菌が原因とされています。
 
◆道具のメンテナンス
道具類は損耗していきますので、新しいものに交換しながら使うようにします。
日常的に使用していると損耗や劣化に気づきにくくなります。月に1回メンテナンス日を設けるなどして、定期的に道具のメンテナンスを行うようにしましょう。

 

 


全6回に渡ってお送りした『プロが教える!トイレのお掃除方法』はこれで終了です。

閲覧いただきありがとうございました。


トイレ清掃のやり方をより詳しく知りたい方は『一般社団法人日常清掃協会』のHPをご覧ください。


©︎2022たてものサービスCo. Ltd.

©︎2022日常清掃協会association

ページトップへ戻る