混ぜただけで危険物に―清掃用洗剤誤使用のリスク

トイレ清掃はオフィスでも家庭でも頻度が高く、つい慣れが生まれやすい作業です。
しかし、洗剤の誤った組み合わせは重大事故に直結します。
特に 酸性洗剤とアルカリ洗剤の混用 は、清掃業界かかわらず、一般家庭でも注意すべき基本事項のひとつです。
そしてこれは決して“他人事”ではありません。
20年近く前ですが、私も当社に入社する前にお世話になっていた会社で、トイレ清掃の研修中に酸性洗剤とアルカリ洗剤を誤って同時に使用し、有毒ガスを発生させた経験があります。
刺激臭が一気に広がり、急いでその場を離れるほど危険な状況になりました。
この経験は、「基本の徹底」がいかに重要かを改めて痛感するきっかけとなりました。
便利なはずの洗剤が「危険物」に変わる瞬間
酸性・アルカリ性の洗剤は、それぞれ得意とする汚れが分かれており、掃除に欠かせない存在です。
しかし、混ざることで化学反応を起こし、有毒ガスが発生する可能性 があります。
例えば、酸性洗剤 × 塩素系アルカリ洗剤 → 塩素ガス発生
という組み合わせは、清掃業務のトラブルとして最も多い事例です。
塩素ガスは吸い込むと喉や肺を刺激し、咳込み・嘔気・呼吸困難などを引き起こします。
本来なら汚れを落とすための洗剤が、一歩間違えれば命に関わる危険物になる――
これが混用事故の恐ろしさです。
“酸性”と“アルカリ性”の違いを正しく理解する
洗剤の分類には「pH(ピーエイチ)」という指標が使われます。
酸性洗剤
尿石・水垢などのカルシウム系汚れに強い
塩酸・クエン酸などが主成分
強力だが扱いに注意が必要
アルカリ洗剤
皮脂汚れ・石けんカス・油汚れに効果的
次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)もこちら
除菌・脱臭効果もある
酸性とアルカリ性は性質が正反対のため、混ざると化学反応が起こりやすく、有毒ガスの発生につながることがあります。
安全に清掃を行うための“5つのポイント”
事故を防ぐために以下5つのポイントとしてまとめました。
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① 洗剤ラベル・色分けを確認する 思い込みは事故のもと。必ず確認をすることが重要です。 |
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② 洗剤を連続して使わない 前の洗剤が残っていると危険です。必ず水でよく洗い流しましょう。 |
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③ 換気を徹底する 扉を開ける、換気扇を稼働させるなど、清掃中はガスがこもらない環境づくりをしましょう。 |
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④ 異臭を感じた瞬間に中断する 刺激臭がしたらすぐに退避が重要です。 |
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⑤ 知識の更新 私の研修時代の事故のように、知識不足が最大のリスクとなります。 清掃会社であれば定期的な研修や情報共有が、オフィスや一般家庭であれば、洗剤のラベルに書いてある用法をよく読むことが安全につながります。 |
まとめ:「正しく使えば安全、混ぜれば危険」それが洗剤です
酸性洗剤とアルカリ洗剤は、どちらもトイレ清掃には欠かせない存在です。
しかし、 組み合わせを誤るだけで危険を生むことがある という点は、プロの現場だけでなく、一般的なお掃除でも同じです。
過去に私が経験したような事故は、少しの焦りや思い込みから簡単に起こります。
ラベルを確認する、洗剤を混ぜない、換気を行う――
ちょっとした心がけを意識するだけで、ぐっと安全に掃除を行うことができます。
トイレ掃除は、身近な作業だからこそ、正しい知識が大切です。
安全に配慮しながら、毎日の清掃をより安心で快適なものにしていきましょう。
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執筆者:株式会社たてものサービス公式コラム編集部
オフィスの日常清掃や、アパート・マンション・オフィスビルの共用部清掃・巡回点検に関する情報を発信する編集チーム。
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